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「まさか、あのカードで監視されてるとは思わないだろうからな」
科学技術は飛躍的に発達した。
長い歴史を持つGPSシステムは、今や道行く人間の毛穴をも映し出せる性能を有している。
超高解像度の画像を撮影できるうえ、スーパーコンピュータの人工知能による高速計算により、一瞬にしてその場の状況を解析することを可能にしているのだ。
また、位置情報だけにとどまらず、音声や体温、簡単な脳波までもが検知可能であり、解析能力の向上に努めている。
日本国が保有するGPS衛星の数も今年で十機となり、精度は飛躍的に進歩している。
あの『国民資産管理証明書』に埋め込まれた極小のチップは、GPSシステムとリンクしている。
生活に必須なカードであるがため、外出の際は大抵の人間が肌身離さず身につけている。
そしてチップには、国民一人ひとりに与えられた個別のナンバーが設定されているのだ。
約五十年前の二〇一五年――。
『マイナンバー』と名づけられ発足した制度が、まさかこのような形に変化して国民に還元されているとは、彼らには予想すらできなかったことだろう。
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