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その苦労を全く口に出すことはなかったこの人が、今日になって
今この瞬間になって自分を作った過去、それも悲しく苦しい記憶を語ってくれた。
この人を本当に行かせていいの?
『あいつは、大東を捕まえるために刑事になった。
今日、大東の元に行かせないということは鞍馬が選択した
刑事という人生を否定することになる』
三坂さんの言葉が蘇る。
「M。もう戻れ。
任務があるだろう。
俺も長話が過ぎた。すまない」
「もし、1億円があったら17歳だったあなたの傍にいることができる
タイムマシンを作ります。そして、ZERO CITYの壊滅を防ぎます!
それで…それで…」
涙でぐちゃぐちゃになりながら、鞍馬さんを見つめる。
窓から必死に手を伸ばし、手を握った。
その手の優しい温かさにまた涙が溢れ出た。
切なくて切なくてどうしようもなかった。
ただ行かせたくなくて、必死に時間を紡いでいた。
もう最後になるかもしれない、鞍馬さんとの時間を。
「あなたを助けます!私が!もっと立派な刑事になって!」
鞍馬さんがふっと笑った。
時間警察に入って、ずっと一緒に仕事をしてきて初めて見る
笑顔だった。
「未来、お前はもう本物の刑事だよ」
そういうと鞍馬さんは、ゆっくりと私の手を戻し車の窓をゆっくりと閉めた。
そして同じようにゆっくりとアクセルと踏んだ。
一度もこちらを振り返ることはなかった。
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