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一億円を手に入れた。
二階にある……息子の部屋で。掃除をしている時に、ベッドの下で見付けたの。
「こんな大金、一体どうやって……」
けれど、それを目にしても、“悪いこと”は想像しなかった。だってあの子は、小さい頃から素直で優しくて、いい子だったから……。
────「ええ!?今日も夜までバイトなの?そんなので、大学のほうは大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。今日だって講義が済んでからなんだし。出来ることなら、増やしたいくらいだけどね」
「駄目よ、それじゃあ体をこわしちゃうわ。もう、そんなにお金を貯めて、なにをしたいのやら」
「秘密だよ、ひみつ!」
あの子には大きな夢があるみたいでね、小さい頃からずっとこんな調子だった。
おこづかいやお年玉も使わずに全部貯金していたし、高校に入ってからは、すぐに学校に届けを出してバイトを始めた。
大学に行かずに働くって言い出した時は、驚いたわ。“お願いだから”って何度も説得したら、ここから通えるところならと渋渋。
まあ、私としては息子が側に居てくれて、願ったり叶ったりなんだけれど。
でも今は、それなりに楽しんで行ってくれているみたい。ただ、遅い時間までバイトをするようになって、家に居る時間が少なくなったの。
それでも、毎日帰っては来るし、ああしてお話もしてくれるのだから、体や大学のほうが大丈夫なら問題ないわよね。
それにしても……あの子のしたいことって、なんなのかしら。こればっかりは、何度聞いても教えてはくれないの。
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