朝起きて…

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朝起きて…

私の腕まくらの中に、少女はいた。 私と同じ方向を向いていた。 しかし、少女の顔は、はっきりと見えた。 (かわいい) と、思った。 そして、すべてが、黒く塗りつぶされた。 私は目覚めた。 腕がしびれている。 そして、顔がなにやら痛い。 そして、私は気付いた。 私は、大きなスーツケースを抱いて寝ていたようだ。 洗面所に行き、鏡でほほを見てみると、くっきりと スーツケースの角のあとが残っている。 (あ!スーツケース!) 私はこの時点で、見覚えのないスーツケースがなぜ ここにあるのか、その中身がなんなのか、興味を持った。 私は、案外、にぶいのだ。 特に変な匂いはしない。 別に普通だった。 持ってみると、そこそこ重かった。 鍵はかかっていないようだ、開けてみた。 そこには、たぶん、札束といわれるものが、鎮座している。 そして、フタのポケットに、手紙のようなものを見つけた。 『一億円あります。差し出がましいようですが、 どうぞお受け取りください。 あなたのお好きなように使ってくださって結構です。 助けていただいた、ほんのお礼です』 女文字だろうか? 男文字には見えなかった。 (助ける、か…) 私は、人などを助ける趣味はないのだが、 なぜかそういう場面に出くわすことが多い。 『一日一善!』という気はないのだが、一日に一度は 何かを助けているようだ。 昨日は、たまたま、商店街で、財布を拾った。 交番に持っていったら、その落とし主が、交番に紛失届けを 出しているようだった。 私は2千円もらった。 せっかくなので、豪勢な外食にした。 5千円払った。 (豪勢過ぎたかな、でも3千円で食べられた  と思ったら安いよ!) と、自己弁護をした。 一昨日は、木から降りられない猫を助けた。 手を伸ばせば届く距離だった。 なぜか、猫に引っかかれたのだ。 薬局で、消毒液と絆創膏を買った。 500円ほど払った。 結局は、損をしているように思えるが、 別にどうでもいいことだった。 特に助けたいと思っての行動ではなく、 勝手に動いてしまうのだ。
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