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「(泣かないで・・・。あなたには、いい人が・・・居るから。)」
「なんで・・・」
「大、じょう・・・ぶ・・・だか、ら・・・・・・」
握り返していた彼女の手が力をなくして車椅子の肘掛けに弛む。
「っ、さん・・・いさん・・・・・・」
喉の奥の方で絞り出すような声が漏れる。
「月依、さんっ!!」
手を離し彼女の両肩を掴んで揺さぶる。
「月依っ!!おい、返事しろよ!!」
「燵夜くん!!」
男は、乱れる青年を羽交い締めにして止める。
「嫌だ。嫌だっ!!」
「燵夜くん。やっと、月依は楽になったんだよ・・・」
冷静な言葉を掛けられ彼女を見ると満足そうな笑みを湛<タタ>えていた。
「なんで、笑ってるんだよ。なんでっ、」
男の手から離れて膝をコンクリートの床に着く。
「月依━━!!」
悲しいが愛おしい叫びが響いた。
彼女の上に舞い落ちる紙吹雪がまるで祝福しているかのようだった。
》 》
己の病の進行状況を彼女は、主治医よりもよく解っていたようだ。
荷物の中からは、〝式は簡単なものでよい〟と言う一文が書かれた手紙が出て来た。
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