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「ルチル、さっきの弾丸で撃てよ」
「そうしたいとこだが、手持ちはあれだけなんだ」
「はっ? 何で一発しか持ってないんだよ」
「滅多使わない弾なんだから、しょうがないだろ。でも、
もう一発凄いのがある。ただし走ってたらが弾を取り
出せない」
「はっ? 使えねぇ……」
二人は必死で走り暗黙の了解で途中で別れたけれど、月島さ
んは走りながらポケットへ手を突っ込むと、真っ赤なスカー
フを高く振り上げた。シルク製のそれは光沢があってひ
らひら靡き如何にも人の目、いや超巨大ゴキブリの目を引き
付けた。しかしながら、それは闘牛のように迫り時速四十キ
ロメートルを超えてた。
ここぞ最高のチャンス! 超巨大ゴキブリは月島さん目が
け、まんまと向きを変えたものの、彼は逃げ切れるか……
ここは月島さんの見せ所だった。なんたって陸上宇宙大会へ
出場経験ある彼は、意地を見せた。誰が見ても素晴らし
い速度で逃げた。
さてルチルさんは特殊な弾を素早く銃へ入れると思い切り
走った。走りながら、「月島、こっちだっ!」と、叫んだ。
彼は方向転換した宇宙生物の僅かに開いた口を見逃さず、天
性の才能で一発狙って発砲したが、流石、王子が惚れ惚れ
するだけある。彼の腕はまさに天下一品。
弾は正確に、「スポッ」と、口へ命中。その瞬間超巨大
ゴキブリは眩い光とともに姿を消したが、月島さんは何が
起きたかさっぱり分からなかった。
「おい、酷くヤバかったぜ。しかし今のは何だ?」
月島さんはそれに興味津々だったけれど、ルチルさんは何
かを探すように辺りを歩いてた。
「ルチル。何やってんだよ」
月島さんが叫んだ。
「探し物だよ」どうやらそれは見つかった。地面に宇宙
生物の巨大な黒い影だけ残ってたが、ルチルさんは前屈み
になると何か拾った。
「これだよ。これを探してた」
彼はそれをポーンと空へ上げた。すると日の光を浴びて青色
に光りながら彼の手へ戻り、右手でギュッと握った。それは
宇宙生物を跡形なく消した不思議な弾だった。
彼はポケットから特殊なケースを取り出して、慎重に仕舞っ
た。
「ルチル。その弾どこで手に入れた?」
「僕の故郷さ。だがこれも滅多使わないんだ」
「だろうな。矢鱈凄い」
月島さんは服の埃を叩くと、ニッと笑ってルチルさんを見た。
「ああ。言っとくけど、この弾を扱うには資格がいるんだよ。
それを取得したのは、僕だけだ」
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