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今度は小さな山島さんが、
「お兄ちゃんは宇宙生物と戦う勇敢な人だね。ルビーさんを
護ってるし大切に思ってるけど、死んだら心残りになるだけだ
よ」
「そうか……。山島さんありがとう」
さすれば、大人の山島さんが笑って言った。
「行動あるのみ、だ」
「綺麗になったわね」十二階の掃除を終了して、買い物をしな
がら私達はマンションへ戻ったが、最近は宇宙生物騒ぎも落ち
着いて、時々王女探しに駆り出されるだけだった。今日はそれ
もなかったから、アップルパイを焼きながら日課のトレーニン
グした。
夜七時頃、ルチルさんが帰って来た。
私は焼いたアップルパイをお皿に載せて、ドアホンを押した。
「こんばんは!」
「ああ、ルビーさん。こんばんは」
「先日お借りした本を返しに来たの。とても面白かったわ。そ
れと焼いたばかりのアップルパイは御礼です」
「嬉しいな。よかったら中へどうぞ」
言われた通り入ろうとすれば、パンジーの腕がいきなり伸び
た。そのせいでお皿をツルッと下へ落としそうになった。
「どうしたの? 彼はルチルさんよ」
私はパンジーの顔をまじまじ見た。彼は妙に切ない表情でこう
訴えてた気がした。「入らないで」と。今にも言いたげ
な顔してた。すると、
「ルチルを好きか?」と、尋ねられた。
「好きよ。だって友達でしょ?」
不思議なことに青い瞳の思いが、私の胸に躊躇わず入り込ん
で心臓が高鳴った。
「私の心臓。一体どうしたのかしら……」
「ルビーさん。どうぞ入って下さい」部屋の奥からルチルさ
んの声がした。
伸ばしたパンジーの腕にバサッと鳶が移動すれば、ゆっくり
指が離れた。
「どうぞ、座って下さい」
久しぶりに彼の部屋へ入ったけれど、相変わらず整理された
簡素な部屋である。
彼はハーブティーとケーキをテーブルへ並べてた。
「あら、この食器」って、私は思わず囁いた。
「そう言えば、以前もこれを使った。あの時ルビーさんに、
『大変高価なものね』って、言われたな」
「だって、ソーサーの紋章が気になったの」
そう言うと、ルチルさんの目が丸くなった。
「この柄が紋章って分かるんだね?」
彼は服の下に手を入れるとペンダントヘッドを見せた。それ
はクオーツに金色の紋章を彫刻したものだったが、見れば見
るほど懐かしい記憶が甦って、私はたちまち漫面の笑顔
になった。
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