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お掃除ゾンビ隊
空一面灰色の雲が覆った。どうやら大雨になりそうだ。
パンジーがここへ来てから一羽の鳶が時々やって来たが、
今夜は雨宿りするつもりか、ロボットの肩にスッととまっ
た。
パンジーは湿気を含む夜風に当たりながら、延々と空を眺
めてた。そこへ田島さんがやって来た。
「ロボットさん。心が揺れてます。どうしたんですか?」
「僕は誰だろう。僕は誰かと一緒だった。それに名前を思
い出せない」
すると田島さんがパンジーの耳元で、「あなたは人間です。
ロボットと生きてますが、ここから出られる術が見つかる
といいですけどね」
そこへ、「こんばんは」と、大人の中島さんが現れた。
「田島さん。今夜は荒れそうですね」
「本当にそうですね。私に湿気は有難いが、何だかロボッ
トさんの心がジメジメして、気になって声を掛けたんだ
よ」
「なるほど、そうですか。う~ん、彼は今困惑してます
ね。で、今後のあなたですが……。私に分かりません。で
はお休みなさい」
パンジーは変な住民に絡まれて迷うばかり。それを知っ
てか知らないか、肩に載った鳶はバサッと頭へ移動した
が、二人の言う通り今夜は大荒れだった。
次の日も雨だった。雨合羽を着て会社へ出勤し、倉庫の片
隅にそれを掛けた。通路が滑りやすくなってたから気を付
けながら八階へ上がった。しかしながらそこで待ってたの
は、ゾンビだった。
「あら、久しぶり」って、呟いたものの、はっきり言って
気色悪い。モップを持って「皆、覚悟よ!」と、声を上げ
る前に彼らは大慌てで後ろを向いた。それもその筈、
逞しくなったパンジーにゾンビと言えども仰天した。
彼らは大慌てで逃げ回ったけれど、その姿は僅かな水に無
数のウナギが、ニョロニョロ蠢いたのと何ら変わりなかっ
た。
パンジーは次々ゾンビを掴まえて、例の事務所へ投げ飛ば
したが、想像つくだろうか。入り口は彼らで敷き詰めら
れ、どう見てもゾンビ屋敷だった。これでは社員が入れな
い。仕方なしに私はゾンビを壁にくっ付け並ばせた。
事務所は気色悪いゾンビの微笑みに包まれつつも、
私はパンジーとさっさと掃除した。少々臭みはあるけれ
ど、一丁上がりである。続けて廊下掃除を始めると、何や
ら、「キャーッ!」と、悲鳴が聞こえた。
「下に何かいるわ!」
時を移さずパンジーの背中へ飛び乗った。
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