第3章 特別報酬仕事

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                     お掃除ゾンビ隊 空一面灰色の雲が覆った。どうやら大雨になりそうだ。 パンジーがここへ来てから一羽の鳶が時々やって来たが、 今夜は雨宿りするつもりか、ロボットの肩にスッととまっ た。 パンジーは湿気を含む夜風に当たりながら、延々と空を眺 めてた。そこへ田島さんがやって来た。 「ロボットさん。心が揺れてます。どうしたんですか?」 「僕は誰だろう。僕は誰かと一緒だった。それに名前を思 い出せない」 すると田島さんがパンジーの耳元で、「あなたは人間です。 ロボットと生きてますが、ここから出られる術が見つかる といいですけどね」 そこへ、「こんばんは」と、大人の中島さんが現れた。 「田島さん。今夜は荒れそうですね」 「本当にそうですね。私に湿気は有難いが、何だかロボッ トさんの心がジメジメして、気になって声を掛けたんだ よ」 「なるほど、そうですか。う~ん、彼は今困惑してます ね。で、今後のあなたですが……。私に分かりません。で はお休みなさい」 パンジーは変な住民に絡まれて迷うばかり。それを知っ てか知らないか、肩に載った鳶はバサッと頭へ移動した が、二人の言う通り今夜は大荒れだった。 次の日も雨だった。雨合羽を着て会社へ出勤し、倉庫の片 隅にそれを掛けた。通路が滑りやすくなってたから気を付 けながら八階へ上がった。しかしながらそこで待ってたの は、ゾンビだった。 「あら、久しぶり」って、呟いたものの、はっきり言って 気色悪い。モップを持って「皆、覚悟よ!」と、声を上げ る前に彼らは大慌てで後ろを向いた。それもその筈、 逞しくなったパンジーにゾンビと言えども仰天した。 彼らは大慌てで逃げ回ったけれど、その姿は僅かな水に無 数のウナギが、ニョロニョロ蠢いたのと何ら変わりなかっ た。 パンジーは次々ゾンビを掴まえて、例の事務所へ投げ飛ば したが、想像つくだろうか。入り口は彼らで敷き詰めら れ、どう見てもゾンビ屋敷だった。これでは社員が入れな い。仕方なしに私はゾンビを壁にくっ付け並ばせた。 事務所は気色悪いゾンビの微笑みに包まれつつも、 私はパンジーとさっさと掃除した。少々臭みはあるけれ ど、一丁上がりである。続けて廊下掃除を始めると、何や ら、「キャーッ!」と、悲鳴が聞こえた。 「下に何かいるわ!」 時を移さずパンジーの背中へ飛び乗った。
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