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私はニ十体のゾンビを廊下に正座させたが、何とも姿勢が悪
い。
「皆さん、背筋を伸ばして下さい。そこのゾンビさん。首だ
け後ろを向いてますわ。前を向いて下さい」と、言うと、首
をスポッと外し向きを変えた。
「あの。外さなくても向きを変えられませんか? 気持ち悪い
です。えっと、そっちのゾンビさん。眼球が一つ床に落ちまし
た。すぐ着けませんと掃除機で吸い込まれます」
それから淡々と掃除のやり方を説明したのだけれど、面白い
ことに彼らは真剣に聞いた、ように思えた。それからゾンビ
達を半分に分け、Aグループがパンジーと、Bグループは私
と九階へ上がった。どっちにしても見栄えは良くない。
彼らに雑巾を持たせ、窓や廊下を拭いてもらった。私が見回
ればまあまあの出来で、予想以上に進行してた。と、その
時、九階でエレベーターが止まった。ドアは確かに開閉した
ものの誰も降りない。不審に思ってボタンを押せば、青白い
顔で月島さんが立ってた。
「月島さん。九階に着きましたよ」って、声を掛ければ、彼
は、「そ、そんな馬鹿な。ゾンビが廊下を雑巾がけしてた。
全く悪夢だ」と、ぶつぶつ呟いた。
「えっと。それは」って、言い掛けたけれど、私を見て安心
したのか、済まなそうにエレベーターを下りた。けれど……
次の瞬間「オエェ~」って、口を押えた。そしてボタンを
「バンバン」叩き、慌てて下へ降りた。何とも気の毒
だったものの、ゾンビ達は、「ヒャッ、ヒャッ、ヒャッ」
と、笑った。
ところで宇宙生物と勇敢に戦う月島さんは、ゾンビが大の苦
手だった。それは後から知ったこと。悪しからず。
「そうじ~、おわりました~」と、名付けて「お掃除ゾンビ
隊」のリーダーが申し出た。
「皆さん。有難うございます。ではこれから雑巾を洗いま
す」
私は彼らを洗面所へ誘導した。そして三人ずつ並ぶと私の
真似して雑巾をゴシゴシ洗ったけれど、彼らは、「ヒャッ、
ヒャッ、ヒャッ」と、余程楽しかったのだろう。面白がっ
て笑った。しかしながら私は排水口を見て呆れた。と言う
のも雑巾を擦るごとに彼らの皮膚と肉が、一枚、また一枚
と剥がれ手の骨が丸見えだった。
「あの。皆さん。骨が見えてますよ」
おまけに排水口が詰まって、ぶよぶよ浮いてる。
ゾンビは自分の指を高く上げると、骨の隙間から天井を覗
き込んだ。
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