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月島さんは寝転がると、「ふ-ん。まるで黒い雪だな」っ
て、呟いた。ルチルさんも仰向けになって、「王子。どこ
にいるんですか?」と、小さい声で囁いた。
二人共メランコリックな気分に浸ったけれど、次の瞬間、
目が皿になった。
「ブヨン、ブヨ~ン!」
黒くて大きな塊が急落下し、シールド上を重苦しく二度跳
ねた。唐突な出来事に二人は頭を押さえた。しかしながら
シールドが酷く歪み落下物は依然そのままだった。
巨大な物体は、どの角度から見ても目の保養にならない。
それは間違いなくゴキブリ型宇宙生物の親で、ギラギラの
目玉とグロテスクな口に反吐が出る。
「何だこいつ。俺の趣味じゃねえよ。おいルチル。この状
態で数か月維持できんのか?」
月島さんは銃を構え叫んだ。
「時と場合による。つまり維持できない場合があって、例
えば今の状態だよ」
「と、言うことは、ヤバいな。こいつに弁慶の泣き所はな
いのかよ」
「無きにしも非ず。ただしシールドを外すよ」
二人が頷くとそれぞれ端へ移動した。
「頼むぞ。お前と一緒に死にたくないからな」
「それは同感だね。で、月島。覚悟はいいか? 行くぞ!」
ルチルさんがシールドを解除した。途端に二人は思い切り走
った。月島さんは撃ちまくったが、ルチルさんは一旦
止まって奴の口めがけて銃を発射した。それは「スポン」
と、入り、体が風船みたいにみるみる膨らんだ。
「ルチル。随分醜くなってるぞ!」
「つべこべ言わず逃げるんだ!」
二人が転がるように走れば、「ドドドドッカーン!」と、爆
発した。と、ともに二人は爆風で吹っ飛ばされ折り重なって
た。この時ルチルさんの耳に妙な音が聞こえたが、月島さ
んはそれどころじゃない。彼の重さに苛立ち、「おい。俺に
そんな気ないから早く降りろ」と、言った。けれど、
「月島。何か変だよ」
ルチルさんは彼の耳元で囁いた。
「いや。俺は正常だ。変なのはお前だろ」
「しーっ。本当のこと話すから良く聞けよ」って、ルチルさ
んは気難しい顔で囁いた。
「これは嘘じゃない。僕らは」
「愛し合えないよ」と、月島さんが睨んだ。
「はっ? 何言ってんだよ。僕らは宇宙生物の上だ!」
「えぇぇぇぇぇーっ!」万事休す。実に酷い叫びだっ
た。
「月島、声がでかいよ。さっさと逃げなきゃ」
ルチルさんは彼を引っ張ると、形振り構わず背面を滑り下り
た。
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