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「っ……何でだよっ……」
けれどそんな俺の期待は叶うことはない。
そりゃあそうだ、西内は今病人だ。
それも重い病の。
しかも今点滴をして、フェンスに寄りかかってこちらを見ているのがやっとな状態だろう。
説教なんて出来るはずなどない。
わかっている。
わかっている。
わかって……。
「西内っ!!」
わかっているのに、やっぱりそれを受け止められない。
「説教しろよっ!!いつもみたいに“言葉遣いを改めろ”って!!……、デカい声出せよっ!!俺が鬱陶しがって逃げるくらいのっ!!……」
認めない。
俺は絶対に認めない。
お前が死ぬなんて。
「これから先っ俺がどうなっていくのかを見ずに死ぬなんて許すわけないだろっ!!勝手に死ぬなんて認めるわけないだろっ!!……」
頬を伝う熱いもの。
それは9歳の誕生日に自分の存在意義について知ったときにすら出て来なかったもの。
そうだ、思い出した。
最後に流したのはもう何年も前過ぎて、とっくに忘れてしまっていた。
けれど、これは確かに涙だ。
俺は今、泣いているんだ。
「だから西内っ!!死ぬなっ!!……生きろっ!!」
いつの間にか地上に落ちた10万本ものブルーローズが風を受け、ブワッと舞い上がった。
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