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広いパーティー会場で両親を探すのは、9歳の小さな純也には大変なこと。
それでも純也は今すぐに嬉しい気持ちを伝えたくて、ひたすら両親を探して歩いた。
しばらく歩くと、いつの間にか純也は会場から出ていた。
それに気付き、純也は会場へ戻ろうと踵を返そうとした。
そのとき、ある一室から話し声が聞こえた。
「旦那様、コーヒーです」
「ああ、ありがとう」
中から聞こえたのは一人の使用人の声と、探し回っていた父親の声。
ようやく見つけたその声に、純也は笑顔になり、その部屋のドアノブへ手を伸ばした。
しかしその手はすぐにピタリと止まる。
部屋の中からこんな話が聞こえてきたから。
「今年は純也坊ちゃんへどのようなものを??」
「ブルーローズだ」
「とても貴重なものではありませんか」
「ああ、そうだ。しかしそれがアイツに一番合っていると思ってな」
このブルーローズについて話している。
このまま聞いておけば、自分になぜブルーローズを贈ったのか、その理由を聞ける。
純也は幼ながらにそう思った。
だから伸ばした手はもとの位置へと下げ、中の声が聞こえるようにと息を潜めてドアへ耳を傾けた。
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