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両親からの愛情が無くても、周りの人間から嫌われていても、自分に何の期待も可能性も無くても。
それでも、西内がいるなら……、西内がちゃんと俺自身を見てくれているなら……、俺の人生は楽しいものになる。
そんな幸せがこれから先もずっと続く。
そう思っていた……。
「にし……うち……??……」
それは突然の出来事。
いつものように攻防戦を繰り返していたとき。
突然西内が口元を押さえて酷く咳き込み出した。
慌てて近寄ると、そっと口元から離された西内の手の上には、まるで絵の具でも塗ったかのような赤色がベッタリと付いていた。
血だ。
俺は驚いて声を上げそうになった。
けれどそれより先に、西内はそのまま倒れ、意識を失った。
俺は何が起こったのか理解出来ず、何度も何度も西内の名前を叫んだ。
「西内っ!!」
小崎家が経営する病院に運び込まれた西内は、手術をしても成功確率30%、助かることはまず不可能であろうと診断された。
そして、仮に助かったとしても、全快は二度と無理だと、そう言われた。
難病で、すぐには受けられない手術を、病院で治療をしながら待つ、つまり入院をすることになった。
出会ったあの日以来、西内が初めて俺の傍から離れた。
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