第二章 金井春子

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* * * * * 「ん・・・!!」 春子ちゃんが激しく何かを言おうとしているが猿ぐつわをかませているせいで言葉にならずに消えていった。 メインゲストである彼女の発言を無視するのも心苦しいので手を噛まれないように気をつけながら顔に適当に巻きつけたビニールテープを取り除いてやると、口に詰めていた雑巾を吐き出して春子ちゃんは怒気をはらんだ言葉を吐いてきた。 「あなたが世間で話題になっている最悪な連続殺人鬼ね」一回スタンガンで眠らせて隠れ家で監禁したせいだろうけど、先ほどの花のように可憐な雰囲気は一変して鬼のような表情のドスの効いた声で激しくオレを叱責してきた。 気の強い、と言うよりもそう言った喋り方に慣れた人間のようだった。 人は見かけにはよらないというし、まあいい。 「あるいはね」 「まさか・・・!?あんな凶悪事件の犯人が女の人なんて・・・!」 松本が上げたヒステリックな声が耳障りだったが、それもまあいい。 「私達を殺す・・・つもり?」険しい表情の春子ちゃんが呻くように言う。 「さてね。殺すかもしれないし、殺さないかもしれない。それは君たち次第かな」 どうでもいい、意味のない問答に興じる。 「・・・どういうこと?」 「さっきも言ったように、オレは君たちを拷問したいだけなんだ。オレが満足するか、飽きた時に君たちが生きていれば開放する。そしてオレは次の娯楽を探すだけさ」当然だろ?と答えた。 「嘘よ!あなたは、あなたは何十人も殺しているのに警察はあなたのしっぽすらつかめていない。被害者を開放なんかしたら絶対に足がつく!殺すんでしょ!?下手な気休めの嘘はやめて」 やれやれ、春子ちゃんはどうにもよくわかってらっしゃる。 もう少しごねてみよう。 「今、君が言ったことの前半部分に関しては同意するよ。確かにオレは狡猾で邪悪な殺人鬼。オレは半年間に50件程度の殺人事件を起こしている。それではクイズでーす!君はオレがこれまでに何人の人間を殺したでしょう?」 「・・・なんの関係が?」低く探るような声で春子ちゃんが言う。 「確か・・・、この前の報道では60人くらいだって言っていたと思う」 おずおずと松本が答え、オレは芝居がかった様子で頷く。 報道はあんまり見てないから実際に報道されている人数は知らないがどうでもいいことだ。
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