第二章 金井春子

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「オレがターゲットにした人間は大体君らみたいな二人から四人のグループだった。特に深い意味は無いんだけど、一人だけを殺すのはオレ的趣向に反するからね。しかし、そうすると50件近い殺人事件を犯しているオレは既に100人以上手にかけているはずだろう?」 嘘と客観的事実を混ぜて問いかける。 確かにオレが起こした事件の数は大体50件くらいだがそれは報道された客観的事実というわけではない。 ちょっとした言葉遊びだ。 ついでに言うと、オレのターゲットは基本的に適当だし、多人数を好んで狙っているわけでもない。 しかし、彼女たちはそんなこと知らないからいくらでも適当な事が言える。 「・・・」少しだけ松本の表情が明るくなった。ちょろいぜ。 「でも、見つかっていないだけかも知れないじゃない」春子ちゃんはそう指摘した。 「いい指摘だね。しかし、それは難しい。ここ暫く逃げまわって生活しているオレは常々実感していることだけど、映画やドラマや小説の中ほど日本警察は無能じゃない。10件ほど事件をたてつづけに起こして全国的に厳戒態勢が引かれて以来、公共の交通機関は軒並み乗りづらくなったし、レンタカーを借りるにしても身分証明以外に色々と個人情報を書かなきゃならなくなって移動しづらくなったさ。それに加えて頻繁に民家や別荘の巡回を地域警察が行うようになってそんな長い時間一つの場所に滞在することが難しくなった」 「国を上げて税金を無駄遣いしているかと思っていたけど、案外効果はあったのね」 話を聞いている間に血色を取り戻した春子ちゃんが皮肉げにつぶやく。 「まあ、そういうこと。ただここまで全国的に指名手配されると、相当数の死体を隠すことはなかなか難しいんだよね。とはいえそれは今どうでもいいことだ。ここで次のクイズ!じゃあ報道されていないオレの被害者達はどうなっている?松本、答えは?」 「えっ・・・、えっと、人知れない場所で死んでいるか、・・・開放されてあなたに捕まったことを黙っている・・・?」
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