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『PHSって知ってるか?』 聞いたことはあった。 ただ大阪等の都市部ではともかく、奈良の片田舎では発展途上の代物だった。 「パチモンの携帯やろ?んなもん使えるかよ!!」 中高生が携帯なんて持てないから、PHSで。。。 世の中そんな風潮だった。 確かに通話料が安かったが、それはPHS-PHSのやり取りであって携帯とのやり取りは高く付く代物だ。 『家電にかけるのも多少は安いらしい。。。』 そっぽを向いたまま中山が続ける。 『そもそも俺んちへの長電話でやな。。。』 こいつがそっぽを向いた時点で気づくんだった!! こいつのお小言は、さっきまでの勢いでは収まらない。 そっぽを向いたのは、俺に遠慮なく舌鋒をお見舞いする前の癖だ。 「その件に関しては。。。あー。。。前向きに。。。えー善処する所存でありましてぇ。。。」 何とも歯切れの悪い政治家の様な返答になった。 『よろしく頼むよ!!』 中山の顔が一瞬、悪代官の様に見えたのは幻か白昼夢だったのか? とにかく俺はピッチ(PHS)デビューをした。 それからと言うもの夜中の中山家の長電話は回数が増えたし、如何わしい奴と如何わしくない伝言ダイヤルの使い方を覚え汗水垂らして得た金は酒と電話に注込んだ。 これでは車は買える訳がない。
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