いつか終わりを迎えるレクイエム

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 月が照る夜空が、まるで堕ちてくる。  周りのネオンが視界の底の方で煌きながら、視線はただ宙の月に吸い寄せられる。  とても冷たく光って、無慈悲な色で私を見下ろしている。  その月の視線がひどく私自身を照らしていて、みればみるほどに冷静に落ち着いていく。  一哉くんが私の隣に寝転んで手を繋ぐ。 「まるで高校生みたい」  私が思わず笑うと、一哉くんも小さく笑う。  まるで月と私と一哉くんだけだ。  この世界がどこまでも甘く2人きりみたいな、そんな錯覚を抱く。 「いいだろ?」 「うん」  広い、広い世界。  果てしなく広がる夜。  いろんな雑音が急速に収斂して、無音に近い。  ドキドキしている心臓の音すら暴かれそうなほどに静かだ。  ただ隣にある気配がたった一つの頼れる明かりみたいに温かい。  ふいに月が消える。  一哉くんが体を起こして私の視界を遮っている。  強い双眸が私を見ている。 「一哉くん?」 「オレ、上、目指すよ」 「!」 「いろいろ迷ったけど、世界と勝負したい。いろんなことあって悩みまくって、バカなこともしたけど、全部大事にしたいんだ」  今までのどんな声よりも落ち着いていて、しかもすごく力強い。  月の光に逆光になっているはずなのに、なんでだろう、一哉くんが光って見える。  とても眩しい。 「一哉くんならやれるよ」 「涼がそう言ってくれるとできる気がする」  一哉くんがガウンで私と2人隠すようにして、そのまま体をかがめて私に覆いかぶさるようにしてキスを唇に落とす。 「ついてきてくれる?」  そっと掠れた甘い声が耳元に届く。  体が痺れたかのようにくすぐったい。 「私でいいの?」  そう問い返すと、一哉くんがぷっと噴き出す。 「え?」 「結婚の話した時も涼、そう言った」 「え、ええ? そう?」 「何度も言うよ。涼じゃなきゃムリだ」 「…うん」 「返事は?」 「ついてく。どこまでだってついてく」 「上出来」  クスリと一哉くんが大人っぽい笑みをこぼす。
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