いつか終わりを迎えるレクイエム

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 一哉くんは優しい目で笑いながら、改めて司さんたち殲滅ロザリオのメンバーの方に向き直る。 「これからも迷惑かけるし、バカなこともすると思うけど、でも。でもオレも司たちと勝負したいって思ってる。これからもよろしく」  一哉くんの言葉に、Hさんが丹野さんと同じように目を潤ませて俯く。セリさんと司さんは微笑んで頷いている。 「迷惑なんておもっちゃいねーよ。そんなもん、かけてなんぼだ」  陣さんは太い声でそう言って笑い、一哉くんが小さく頷いて私の方を最後に見る。  ついてくよ。  口パクで伝えると、一哉くんがすごく嬉しそうに頷いて、南雲監督の脇に座る。  南雲監督が何か一哉くんに言って、一哉くんが照れくさそうに小さく頷いている。  いい人たちに恵まれている。    いいものをつくるチームというものはそういう空気が流れているものだ。居心地がいいけれど、呼吸のリズムがあい、そこに一筋の緊張感があって、同じ方角に向かって肩を並べることができる。  きちんと言いたいことがあって、それを伝えるべき時に伝えられる。無理や迷惑や、そういうことではなく、この人のためなら、多少の無理や迷惑も構わないと思える信頼関係が結べていること。  音楽を軸にクリエイターとして、そういう相手と出会えること、一緒に作り上げていけることは容易そうに見えてそうでもないのだと思う。  だから、これは一哉くんという奇跡的な人物の元に集った、希有なチームなのだ。  和やかに試写を坂崎さんが締めくくり、スタッフたちがバラバラと部屋を出ていく。  司さんたちが一哉くんに近づいて、何か笑いあっている。それを見送り、私は5人をそっとしておいたまま試写室の外に出た。  きっと私たちは大丈夫。  こみあげてくる不思議な確信が、今は世界への道に見えていた。
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