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全国ツアーも残すところ、東京に戻ってのファイナルだけとなった。同時に、雑誌の巻頭グラビアや殲滅ロザリオ特集もまた組まれるようになりつつある。
精力的にモデルの仕事も勤めている一哉くんをみると、数ヶ月前の一哉くんとは、同じようにしているだけなのに気迫が違う。
スキニーパンツに大きなドット柄のゆるシャツをはおり、中折れハットをかぶった一哉くんが打ちっ放しのコンクリートの無機質なスタジオでポーズをとっている。
カメラマンの呼吸に合わせて、ハットを上手に小道具に使いながらカットを重ねていく。
ファッション雑誌系のモデル撮影は、ほぼ私が立ち会うようになっていて、その度ごとに新しい一哉くんを見るようで楽しい。
「衣装チェンジお願いしまーす」
編集者の女の子が写真をチェックしてからシーン替のゴーサインを出す。
編集者たちと一緒に写真チェックしていた一哉くんは、メイクさんに促されて出ていく。
その間にもライトテーブル上でMacに落とした膨大な写真を編集者たちは確認して、適を選び出している。
マネ代理ととはいえあまり一哉くんベッタリをしたくない私は、スタジオのセットを替える大道具のスタッフやカメラマンの様子を隅から眺めていた。
そこにドアを開けて1人の男性が飛び込んでくる。
見ない顔だ。
編集者たちが顔をあげて破顔する。
「副編!」
「遅いっすよー」
「悪い、下版が押した」
髭が伸び放題でヨレヨレのシャツを着て、明らかに他のこざっぱりした編集者たちとは違う風采だ。
「今衣装替えしてます、どうですかね?」
早速写真チェックに入り、真剣な表情でMacの大きい画面をのぞきこんでいる。
「うーん、これ捨てたのか?」
「ちょっと……ピンが甘いかなと」
「でも服の動きとモデルの表情はいいよな?」
ダメだししているのか、厳しい声が飛び交う。
その空気は張り詰めているのに、決して嫌なものじゃないのが分かる。きっとこのチームも、クリエイティブの面ですごくいいチームなんだろうと思う。
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