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ふわりと舞うレースのカーテンの隙間から真っ白い光が差し込んで、透けるような青空がちらりと見えた。
太陽がだいぶ高い。
眩しさのあまり目を閉じると、ベッドの中の2人分のぬくもりがこのまま静かに目が覚めない午睡へとそのまま連れ去ってしまいそうだった。
「一哉くん、起きて。もう用意しないと」
ぬるま湯のような誘惑を振り切って、傍で眠る一哉くんに声をかける。
熟睡している。そのあどけない年齢相応の顔を見つめていると、本当にこのまま2人きりの穏やかな時間に閉じ込められていたいと思ってしまう。
「一哉くん、起きて」
私の体を巻き込むように抱きしめたままうつぶせているその滑らかな肩を揺する。
ひんやりして、少し甘噛みしたくなった自分の欲情を、真っ白な太陽の光に霧散させる。
「う……ん」
「一哉くん」
まだわずかに時間に余裕があると言っても、今日はレコード会社との打ち合わせ、その後取材が数本入っている。時間刻みのスケジュールが用意されている。
なのに、彼は起きる気配がない。
仕方なしに解放してもらえない身体をねじり、角度を変えて一哉くんの耳に唇を寄せた。
「起きて、一哉」
できる限り甘く、できる限り色っぽい吐息を絡めて、一哉くんの何連も連なったピアスが色気を添える耳朶の曲線にそって舌を這わせた。
そして最後に、少し強めに甘噛みする。
「……ん……あ」
びくっと肩を震わせるようにした一哉くんがパチリと目を開ける。
「起きた」
笑った私に、一哉くんが珍しく真っ赤になっている。
一哉くんの弱点をつくと、意外に素早く目を覚ましてくれる。そう覚えたのは、一緒に暮らし始めて間もない頃だった。たまたまだったけれど、いつも私ばかり翻弄されている身としては、一哉くんの弱点を知った時は意味もなく狂喜してしまった。
以来、いざという時の手管なのだけれど。
「……っ起きた、じゃねー」
文句を言いながら、一哉くんが私の体から腕を外す。と見せかけて、そのまま指の腹と手のひらで私の身体の輪郭を確かめるようにさわさわと滑らせる。
その絶妙なタッチは、逆に私を困らせるものだ。
「や、だめ、一哉くん、時間、時計見て」
逆襲する勢いの一哉くんの手を防ぎながら、枕元の時計を掴んでズイッと一哉くんの顔の目の前に突き出す。
「うわ」
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