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「モデルデビューもして、活動していただきます。基本的に民放関係の映像の露出はありません。ですが紙とweb媒体についてはファッションモデルとして、さまざまなスタイルで撮影させていただきます」
「司! そんな話きーてねー!」
「うん、言ってないですよ」
「だいたいさ、バンドとモデルがなんの関係あんの?」
「関係あるかないかの話ではないんですよ。ロックバンドとしていずれ世界に打って出る。そのための布石の一つです。殲滅ロザリオの希有な魅力の一つは、トーイの美貌です。このヴィジュアルに魅了されない女性がいないわけがない。ぜひ売りにしたい」
坂崎さんのビジネスとしての冷静かつ分かりやすい言葉に、一哉くんが唇を噛み締める。
「音楽誌はもちろん、あらゆるファッション誌でも殲滅ロザリオの特集を組みます。同時にフロントマン……ヴォーカルであるトーイ個人の魅力も大々的に活用したい」
「オレはアイドルじゃねーっつの……」
「分かっています。その上でお願いしています。初動時からファン層を多くとりこみたい。そうして一年後にはワールドツアーをするまでに知名度を高める。国内でロックバンドの代表格に名実ともになっていただく。そのためにはシークレットも含めたライブ、フェスへの参加、国内ツアーそれだけではまだ足りない。レコーディングだって海外の有名ミュージシャンを参加させたい。我々は、会社として殲滅ロザリオに大きな期待を寄せています。世界に立つ。それを殲滅ロザリオのスタートラインにしたいんですよ」
坂崎さんの熱のこもった言葉に、一哉くんが考えるように俯く。
「メジャーで売れるか売れないか、この業界はとてもシビアです。音楽性だけでは生きていけない。スタイルからすべて魅せるという頭でいなくては。もちろん殲滅ロザリオの場合、音楽性だけでも充分すぎるほど世界にいけるという話もありました。それでも私たちは正直、何度もライブを観覧させていただいて、久しぶりの大物感に奮い立っているんです。バックアップできることはすべてやりきりたい。サイクルの早くなった業界です、スピードも大事なんです」
殲滅ロザリオのメンバーも皆黙って、一哉くんの言葉を待っている。
「……分かった。でもオレ、取材とかで話すの苦手なんだけど」
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