第1章

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「我が国はこの状態に対して対応出来る手段を持っていないのか?」 「地上にいるすべての国民の命を救うことは不可能です」 「地上?地上以外に何かあるというのか?」 「大統領、我が国には大統領にも秘密にしなければならない機密事項があるのですが、 国土の全てに非常事態宣言が発令された今なら、その機密事項を大統領にお伝えする ことが出来ます」 「その情報とは何だ?」 「大統領、エリア五十一の存在はご存知ですね?」 「あぁ、もちろんだとも」 「エリア五十一の中には様々な軍事施設がありますが、今回のような大規模核攻撃を 受けた時のために、巨大なシェルターがあります。このシェルターのコードネームは 『アンティル』です。アンティルは地下十キロメートルに位置する直径十キロメート ル・高さ五百メートル・五十階建ての超巨大シェルターで、収容可能人数は一万人に も及びます。地熱発電と糞尿発電により十分な電力を得ることが出来ます。さらに糞 尿発電は排泄物を電力と肥料と水に変えてリサイクルすることが出来ます」 「そんな素晴らしいシェルターがあるとは知らなかった。だが問題なのはそのアンテ ィルに入る者をどうやって選ぶかじゃないか?」 「その通りです。誰でも入れるという訳ではありません。まず若く健康で標準的な知 能を有している必要があります。また、放射能の被害を受けていないこと、そしてア ンティル内でのルールを守れる遵守意識の高い者でなければなりません」 「全くその通りだな。だが、そのような者をいったいどうやって見つけるつもり だ?」 「我々は全国民の個人データを有しています。これらを元にテロ被害に合っていない 者を探すことになると思います」 「もしアンティル適合者が断った場合はどうするつもりだ?」 「その場合は別の者を探します。ルールを守れない者はアンティルに入れないからで す。さらに他にもお伝えしなければならないことがあります」 「なんだね」 「我が国家はすでにスペースコロニーを所有しています。コロニーのコードネームは 『ノア』です。ノアは地球から太陽に向かって百五十万キロメートルのラグランジュ 3に位置しています。ノアの大きさは直径二百メートル×長さ一キロメートルの円筒 状で、千人が居住出来ます。太陽光発電が出来、リサイクルシステムも搭載していま す。現在、すでに百人のテスターが生活しています。あと九百人、居住者を移住させ
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