1人が本棚に入れています
本棚に追加
ることが出来ます」
「なるほど、わかった。それでは私からの提案なのだが、数人でもいいので知能の高
い者をノアとアンティルに入れたほうがいいんじゃないか? 千人もの人間が暮らす
場所なら、いざという時に知恵を与えられる者が必要だと思うんだ。居住者のうち、
誰かが政治的リーダーになるのだろうが、その者の参謀役が必要じゃないか?」
「たしかにそうですね。それには格好の人材がいますので、彼女をアンティル入居者
の候補に推薦しておきます」
「彼女?」
「はい、アナメンシス・バージェスという十五歳の女の子なのですが、ブランドン原
発のテロで重傷を負い、治療の為にクアンタムキューブという量子コンピュータに意
識を移されたそうです。彼女はアナと呼ばれているそうですが、アナのクアンタムキ
ューブには人類がこれまでに得た全ての知識がインストールされています。なにかわ
からないことがあった時にはアナに聞けば何でも教えてもらえるのです」
「それは心強いな」
「アナ以外にもレイモンド・ウィリアムズという男の子の意識を移したクアンタムキ
ューブもあるのですが、こちらはノアに移送する予定です」
「他にはなにかあるか」
「はい、実はこれが最も深刻な伝達事項なのですが、間もなく地球に小惑星が衝突し
ます」
「なんだって?!」
「地球にシシュフォスという名前の小惑星が衝突するのです」
「被害予想は?」
「現時点ではトリノスケール十以上、ハワイ沖合に衝突する可能性が高いそうです。
この場合、極めて大きな地震が発生し、沿岸部では高さ二キロメートル、時速五百キ
ロメートルの津波に襲われます。地上には大量の塵が舞い上がり、隕石衝突の冬がや
ってきます。この為、地表で暮らす生命体のうち、九十九パーセントは絶滅します。
海洋植物プランクトンも七割以上が絶滅するので、このプランクトンに依存している
食物連鎖上の生命体も絶滅することになります」
「そのシシュフォスとはいつ衝突するんだ?」
「GMTで一周間後の午後五時頃です」
「なんとか衝突を回避する方法はないのか」
「すでに核ミサイルを衝突させてみましたが、シシュフォスが地球に近づきすぎてい
る為、効果はありませんでした」
「なんということだ…… このことは報道規制がかかっているのか?」
「はい、国民に知らせたとしてもパニックを引き起こすだけですので…… 私達はア
最初のコメントを投稿しよう!