第1章

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って大陸間弾道ミサイルを発射したのだ。ミサイルにはジャミング機能が搭載されて いたので、PAC-3で迎撃することは出来なかった。 10  西暦二〇一七年六月二十四日  アメリカに対する核攻撃は終息の気配を見せることはなかった。引き続き、アメリ カ全土に核ミサイルが着弾していた。こうなるとアメリカも自主的に核ミサイルを発 射せざるを得ない。すでに全面核戦争の状態になっていたが、これに拍車をかけるこ とになった。  ミサイル発射担当者に照準が書かれたメモが渡された。そのメモには世界の主要各 国の首都とISの支配地域が書かれていた。ミサイル発射担当者は言った。 「敵さんは弾頭にジャミング装置を付けている。ならばこちらも真似をさせてもらお う!」  数百発の大陸間弾道ミサイルが二四時間体制で発射された。  一方、ノアとアンティルの居住候補者が次々にリストアップされていた。なにしろ 隕石衝突まで時間がない。FBIが居住候補者の家々を訪れ、事情を説明していた。FBI のいうことに異論を唱える者はほとんどいなかった。  今避難している戸建て用シェルターに比べれば、ノアとアンティルに移住したほう がはるかに生存確率が高いからだ。親子の永遠の別れを見ることもあったが、勧誘さ れた青少年達は使命感を持って旅立っていった。  アンティルは地下シェルターなので移動するのに若干時間のゆとりがあったが、ノ アの場合はロケットでの移動になるので数回に分けて宇宙空間へ行かなければならな かった。その分、急ぐ必要があった。  アンティルとノアの居住候補者は次々にヘリコプターで移送されていた。それぞれ の居住候補者には医者や教師、政治学者や歴史学者や科学者など、様々な学識経験者 が含まれていた。  このタイミングでネメシスからの犯行声明がネット上に公開された。その動画は ジーンが演説するもので、以下の様な内容だった。 「我々はネメシスである。君達がいうところのテロ組織だ。今回の原子炉攻撃や核戦 争を誘発したのはすべて我々の手によるものだ。普通のテロ組織とひとつ違う点は、 我々の標的は全ての人類だということだ。人類は傲慢になりすぎ、他の生命体の進化 を阻害している。肉を食べる時に、その肉の持ち主だった者へ感謝の念を抱く者がい るだろうか?  自分達が食料と決めた生命体は容赦なく殺すが、自分達が守ろうと決めた生命体は
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