1人が本棚に入れています
本棚に追加
必死に守ろうとする。そんな矛盾を抱えた生命体が地球に存在していてはいけないの
だ。我々はあらゆる手段を使って全人類を攻撃する。今こそ人類は粛清されるべきな
のだ。まだ我々の攻撃手段は残っている。楽しみに待っているがいい」
モーリスは核攻撃から逃れエリア五十一にいた。モーリスはレイとアナに対してノ
アとアンティルへ移住してもらえるよう説得する役目をFBIから預かっていた。モー
リスはレイとアナの前でやや重い口を開いた。
「レイ、アナ。君達に相談があるんだ」
「なに?」レイがすぐに反応した。
「今、地球上は全面核戦争に突入しているんだ。さらに、一週間後には隕石が衝突す
る」
「本当?」今度はアナが言った。
「あぁ、本当なんだ。アメリカ政府は、宇宙にあるスペースコロニーと地下にあるシ
ェルターに人々を移住させる計画を立てている。そこで、スペースコロニーとシェル
ターのそれぞれに君達に住んで欲しいんだ。具体的にはスペースコロニーにはレイに、
シェルターにはアナに住んでほしいと思っている」
「え?僕達離れ離れになっちゃうんですか?」
「物理的にはそうだけど、お互いに電波で交信出来るから会話は問題なく出来るよ」
「あたし達は何をすればいいんですか?」
「君達には避難した住民が困った時の相談相手になって欲しいんだ」
「君達が入っているクアンタムキューブには、君達の意識の他に、これまでに人類が
得た全ての知識がインストールされている。その知識で困っている住民を助けて欲し
いんだ」
「わかりました。僕はスペースコロニーに行きます。せっかく助けてもらった命だも
ん、ちゃんと使わないともったいないですからね」
「あたしもシェルターに行くわ。人助けになるんでしょ?」
「その通りだ。まさに人助けの為に行ってもらうんだ。これで話しは決まりでいいか
な?」
レイもアナも短く「はい」と答えた。
「よし、それでは早速移動開始だ。レイ、スペースコロニーには私も行くことになっ
ているので、一緒に行こう。スペースシャトルで三日ほどで到着する予定だ。アナは
FBIが来るから、そうしたら一緒に行ってもらえるかい?」
「わかりました。レイに負けないように頑張ります!」
「それではアナ、移住先に着いたら電波で話そう」
モーリスはレイが入っているクアンタムキューブを持つと専用のケースの中に入れ、
足早にスペースシャトルの搭乗ゲートへと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!