第1章

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る元凶であると確信しているテロ組織だ。「人類滅亡計画」を立案し、実行に移しつ つある。ネメシスの理念に共感する者は多く、資金・物資・人材などの支援を受けて いた。ブレジネフ書記長もその一人だった。  計画実行の日まではまだ数十年あるが、チャンスはたった一度しかない。ジーンは 綿密かつ大胆な計画を立てて慎重にことを運ぶ必要があった。 3  西暦二〇一七年五月十三日。  レイ(レイモンド・ウィリアムズ)は焦っていた。昨日出された宿題をまとめた ノートを家に忘れて来てしまっていたからだ。登校途中に慌ててユーターンをして、 家に向かって走り続けていた。その途中、アナ(アナメンシス・バージェス)とすれ 違った。 「アナ!早くしないと遅刻しちゃうよ!」 「それはあんたでしょ! また忘れ物?」 「そうなんだ?! とにかく急がないと!」 「あたしは大丈夫だから! 気を付けなさいよ?」  レイとアナは幼なじみだった。二人とも二〇〇二年生まれで家も近所だった為、兄 弟同然に育ってきた。今年で十五歳になる。幼かった頃は遠慮無くなんでも言いあえ たが、思春期を迎えた今は「幼なじみ」と「男と女」という二つの距離感がミックス された微妙な状態だった。  レイはアナに対して仄かな恋心を抱いていたが、それを言い出せずにいた。これま での関係が壊れるのが怖かったからだ。アナはレイに対して母性に近い感情を抱いて いて、正義感は強いがおっちょこちょいなレイをいつも陰ながら支えていた。  レイは汗だくになって学校に到着した。なんとか遅刻は免れたようだ。レイはアナ と同じクラスだった。レイはアナに言った。 「は?。なんとか間に合ったよ」 「今度から気をつけないとダメよ…… って、何回同じこと言わせるつもり?」 「ははははは…… ほんとに自分でも情けないよ」 「あなたは慎重さが足りないのよ。そもそもねぇ……」  レイが話題を変える為にアナのいうことを遮った。 「まぁまぁ、そう言えば、知ってた? 今年の社会見学はブランドン原発らしいよ」 「原発? そんなところ行っても見るものなんてなさそうじゃない?」 「現代社会のエネルギー源を見学するっていうのはなかなか興味深いけどなー」 「レイは相変わらず好奇心旺盛ね。で、社会見学はいつなの?」 「たしか、来月の上旬くらいだったんじゃないかなぁ」
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