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「ふーん、わかった。とにかくあなたは慎重さが足りないことを自覚するように
ね!」
レイはいっそのこと今アナに告白してしまいたいと思ったが、アナに慎重になれと
言われたばかりなので、もう少し延期することにした。
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西暦二千十七年六月二一日。
レイが通う学校の一年生は今日が社会見学だ。見学先のブランドン原発は三基の原
子炉からなる中規模の原発施設だ。天気も快晴で、誰もが開放感を満喫していた。好
奇心旺盛なレイは、誰よりも先に見学ルートの最初にある一号機に向かって走ってい
た。
「アナも早くおいでよ!」
「わかったから、そんなに走らないの!転ばないでね!」
「大丈夫だよ!」
と言った矢先にレイは派手に転んでいた。
二人は見学用ブリッジの最前列に立ち、一号機原子炉をゆっくりと眺めていた。
ブランドン原発の施設内にはネメシスの工作員が三人紛れ込んでいた。『紛れ込ん
でいた』というよりは職員として「従事していた」といったほうが正しいかもしれな
い。彼らは数年前からブランドン原発で働いていたからだ。頭脳明晰で仕事ぶりも良
かったので、彼らがネメシスの一員であると気付く者は誰一人としていなかった。
工作員の一人ラズは、全身にじっとりと汗をかいていた。極度の緊張を和らげるた
めに何度か深呼吸をした。ラズはロシア製のウラン二百三十五が約百kg入っている小
型原爆が入っているスーツケースを台車に載せて、誰にも見つからないように一号機
へと向かった。核燃料プールの近くに来ると、小型原爆のタイマーを起動させた。
防護服を着ていないラズは、高濃度放射線を浴びて瀕死の状態だった。意識が何度
も遠のいてくらくらする。最後の力を振り絞ってスーツケースを燃料プールへ台車ご
と蹴飛ばし、自らも飛び込んでいった。
ラズはタイマーがゼロになる前に強烈な放射線によって即死した。ラズを見送った
残りの二人の工作員も、ラズと同様にスーツケースを運び二号機と三号機の燃料プー
ルへ飛び込んでいた。
三発の小型原爆はタイマーがゼロになるのと同時に、TNT火薬数万トンに匹敵する
大爆発を引き起こした。これにより、燃料プールに入っている燃料棒の核物質を大気
中に飛散させることに成功した。このテロ行為はブランドン原発だけでなく、世界に
ある四百三十一箇所全ての原発で同時多発的に発生していた。
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