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ともクアンタムキューブに意識を移すことに成功した。
モーリスは二つのクアンタムキューブにカメラ・マイク・スピーカーを取り付け、
レイとアナの意識が正常かを確認することにした。
「レイ、レイ……!聞こえるか?もし聞こえていたらなにか喋ってみてくれ」
「はい、聞こえます。あなたは誰? ここはどこ? 今、僕はどうなっているんです
か?」
「レイ、ここは病院の中で、私は脳外科医のモーリスだ。混乱するのはわかる。まず
はいったん落ち着いてくれ」
「僕は原発の見学をしていて…… その後の記憶が無いんです。いったい何があった
んですか?」
「君が見学していた原子炉は核爆発を起こしたんだ。原因はまだわかっていない。そ
して君は重傷を負っていたので特殊な手術をする必要があったんだ。君は今、コンピ
ュータの中にいるんだ。しかも地球最速のコンピュータだ」
「僕がコンピュータの中にいる?!先生が何を言いたいのか理解出来ません」
「今は理解出来ないのも無理は無い。でも大丈夫だ。少しづつ理解出来るから安心し
てくれ」
「そうだ、アナは?!アナはどうなったんですか?僕と一緒に見学していたんですけ
ど……」
「アナも君と同様に重傷を負っていたので、君と同じ手術を受けた」
「そうですか。アナは生きているんですね?」
「そうだ。大丈夫。君と同じ状態だがちゃんと生きている」
「アナ!聞こえる?僕だよ!レイだよ!」
「レイ、聞こえるわよ。あたし達はモーリス先生に助けてもらったのよ」
レイは地球最速のコンピュータの中にいると言われたので、試しに簡単な数学の計
算を行ってみた。答えは問題を考えた瞬間に頭の中に浮かんだ。
「僕は本当にコンピュータの中にいるんだ……」
レイは少しづつ実感を覚えていた。
モーリスはレイとアナの意識を小さなクアンタムキューブに入れたことについて、
自問自答していた。彼らの意識はしっかりしていたが、生身の人間の意識を機械の中
に入れてしまったことについて悩んでいた。彼らは一生涯をあのクアンタムキューブ
の中で過ごさなければならないのだ。
しかし、悪いことばかりではなかった。クアンタムキューブから電波で交信可能な
ヒューマノイドを利用することにより、人間に近い動作や反応をすることは可能だっ
たし、老化することが無いため、寿命は無限に近いと言っていい。
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