第1章

8/212
前へ
/212ページ
次へ
ス・ドイツ・ロシア・中国・北朝鮮の首都に大陸間弾道ミサイルを十発づつ発射した。 アメリカにはさらに十発を時間差で発射した。スイス・イスラエル・ノルウェーなど、 核シェルター普及率の高い国には二十発を発射した。  中東各国に発射されたミサイルは間もなくして着弾が確認され、甚大な被害をもた らしていることがわかった。アメリカなどに発射された大陸間弾道ミサイルはいった ん大気圏を抜けて宇宙空間を飛翔した後に再び大気圏に突入した。迎撃ミサイルを無 効化するジャミング電波を放出しながら、マッハ二十(秒速約七キロメートル)以上 の超高速で標的地に向かい、標的となった都市を殲滅させていた。 7  アメリカのスコット・マルティネス大統領は、ホワイトハウスの地下にあるシチュ エーションルームで今後の対応策を協議していた。原子炉爆破テロにも迅速な対応が 要求されたが、まずはミサイルの発射地点が判明しているので、第三波のミサイルが 発射される前に報復攻撃をすることが決定した。早速、大陸間弾道ミサイルの発射命 令が下った。  フランシス E. ワーレン空軍基地のミサイル発射担当者は、十発のミサイルをISの ミサイル発射源に発射するよう指示された。ミサイルの調整や確認作業が終わった後、 ミサイルは次々に発射された。しかし、ミサイルの行き先はISの支配地域ではなく、 ロシアと中国だった。ミサイル発射スタッフの中にネメシスの工作員が紛れていたの だ。  北京とモスクワは核の炎に包まれた。ロシアと中国は直ちにアメリカに対して報復 の大陸間弾道ミサイル攻撃を行った。パトリオットで撃墜を試みたが、ミサイルの数 が多すぎて対応しきれなかった。この攻撃によって、ワシントンとニューヨークが甚 大な被害を受けた。  核ミサイルの照準をロシアと中国に変えたネメシスの工作員はすぐに特定されたが、 彼は逮捕される前にピストルで自分の頭を撃ち抜いて死んでいた。  核ミサイルによる報復攻撃の連鎖により、今や地球上に放射能に汚染されていない 地域を見つけることが難しいほどの大量の核ミサイルが発射された。放射能に汚染さ れていない地域といえば、北極と南極、それに赤道近辺の一部の地域だった。 8  ネメシスの監視チームは各国の様子をテレビとインターネットでモニタリングして いた。ジーンは監視員に訊いた。 「予定通り進んでいるかね?」
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加