平穏な日々へ

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…… 眩しすぎるくらいの朝日の中、彼は目を覚ました。 上質なベッドに上質な布団、寝心地は最高で、眩しさに目が覚めたとは言え寝覚め自体は悪くない。 どういうわけかカーテンは開け放たれており、そりゃ眩しいはずだ、と黄土色の髪の青年は、まだ上手く回らない頭ながらも納得した。 窓の隙間からそよぐ風が心地よく、ゆっくりと青年の脳は活性化していく。 そして、上半身を起こして、ふと自分の隣を見たとき。 「すぅ、すぅ……」 安らかな寝顔で、健やかな寝息を立てるピンクの前髪が右分けの、彼と同い年の美少女。 その肩甲骨よりやや下ほどまで伸びているであろうその長い髪は、まるで激しく動き回ったあとのように乱れていたが、彼女は自分と同じく、実に綺麗に布団を被っていた。 ……そして彼は、彼女と、そして自分の身に起こった違和感の正体を悟る。 彼も彼女も、一糸纏わぬ姿であった。 これらの情報が示唆する結論はひとつ。 「ああ……そういや、そうだった」 そして彼は全てを思い出す。 昨夜の出来事を。 そして爽やかな寝覚めが一転、曇りがちな天気のように湿った気分が彼を襲う。 「俺って……ヤツぁ……」 両手で頭を抱え込み、がっくりと項垂れる。 彼を襲っているのは、情けなさと恥ずかしさ。 ……詳しくは彼の名誉の為に敢えて伏せておくが、ざっくり言うならば。 彼は負けた、ということである。 いや、もともと勝ち負けをつけるようなものではないのだが、彼の中では、彼の定義では負けていたのである。 そんなこんなで、苦い思い出……彼女にとっては甘い思い出となった、男女の初夜。 未だショックから立ち直れない彼をよそに、隣の少女が目を覚ます。 「ん……んん、おはよ、シュウ……」 眠気眼を擦りつつ、ゆっくりと静かに起き上がる。 彼……シュウよりも遥かに眠たそうで、寝起き抜群と呼べる状態ではない彼女は、明らかに疲れが抜けきっていなかった。 「お、おう……おはよう、ルミ。まだ眠いか?」 「うん、ちょっとだけ、ね……でも、シュウと一緒にいたいから、もう起きる」 そんなシュウは、先ほどまで落ち込んでいたという素振りを隠しつつ、彼女……ルミを気遣う言葉を投げかけた。 しかし、その気遣いも杞憂に終わりそうだ。 ルミは、シュウの隣にいれること、それそのものが……なによりの幸福なのだから。
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