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 「ねぇ、○○」    「……ん。いや、人をまたずいぶんと、懐かしい名で呼ぶのだね」  「少し、気になったことがあるんだけど、訊いてもいい?」  「ふむ。私に答えうることであれば、善処しよう」    「ずるい言い回しだね。センセイも言ってたよ。頭のいい人は、必ず自分の言葉を裏切る準備をしている、って」  「最近の修道士は、過激な物言いをするのだね。否定はしないが――しかし、それは頭のいい人間の特徴ではない。臆病者の証左だよ。裏切るのではなく、逃げ出す準備だ。なればこそ、言葉が軽い。脱ぎ去る甲冑は、軽量なほうが好ましいからね」  「……ふーん?」  「分からないなら、分からないと言うといい。持って生まれた性分だけに、直せないのだよ。なるべく平易に言い直そうか」    「ううん。いい。○○は、そういうこと苦手でしょう?」    「――――そんなことはないよ」  「ほら、動揺した。○○って、隠すのはうまいけど、嘘を吐くときやごまかすとき、必ず顔に出るからね。今もはっきり分かるよ」  「いい加減なことを。でまかせもたいがいにしたまえ」  「でまかせかどうか、なんて○○以上に詳しい人、いないじゃない。今だって、それくらいは分かるでしょう」  「……別に、そんなことはどうでもいい。些事だよ。で、気になったこと、というのはなんだね?」  「あー、話そらしたー」  「馬鹿者。戻した、と言いたまえ。で、なんなのだね? この私に訊きたいこと、というのは」  「うん。それはね――」
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