213人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
さらりと肩に流れるロングヘア。
スプーンをもった指のしやなやかな細さ。
食べ物を口に運ぶ時の仕草のキレイさ。
今日も先輩は、きれいだ。
同期で女の割に男っぽくさばさばした感じが気の合う佐原が、何か話しかけて、それに先輩が微笑みながら頷いている。
お昼時で混んでいる社員食堂では、たくさんの社員がそこかしこで笑いあいながら順番を待っている。
今日のオススメのビーフカレーを口に運びながら、そっと長テーブルを2つ挟んだ正面のテーブルの様子をうかがう。
直属の上司である高梨先輩が千夏先輩と佐原との3人でランチをとっている。
食べているのは、どうやら同じビーフカレーだ。
これでランチが終わったあと、共通の話ができる。
頬が緩みそうになるのを意識した時、ふっと佐原が顔をあげてオレの方を見て、ニヤリと笑う。
それが何を意味しているかわかるから、嫌味な奴だと思う。
嫌な奴だけど、でも。
佐原はそのまま高梨先輩たちの方を向いて、そして高梨先輩に何か話しかける。
オレだってあの輪に入りたい。
佐原に何か言われた高梨先輩が顔をあげて、オレの方を見る。
ああ、佐原の奴、さすがだ。分かってくれてる。
涼しげな目がオレをとらえて、そして微笑んで手を振る。
抱きしめたら柔らかそうな、でもどこか守りたくなる微笑みにかあっと身体中が熱くなる。
先輩。
高梨先輩。
好きです。
ずっと見ていたいのを我慢して頭で会釈して、目の前のビーフカレーを口に運ぶ。
さっきよりペースが早くなる。
ドキドキしている胸の奥を、唯一ばれてしまった佐原以外には悟られたくなかった。
最初のコメントを投稿しよう!