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三十九人。
彼女が殺した人は全員殺し屋だったそうだ。
俺の手元に残ったのは一万円と書かれた紙切れが千枚と
なんと表していいのか分からない感情だけ。
昼間から降り続いていた雨は俺の希望通り硝煙の匂いも鉄臭い血の匂いも洗い流してくれたが俺の鼻の奥にこびりつく匂いは何時まで経っても消えることは無く。
日付が変わった頃に雨も止んでいた。
彼女の部屋には少し焦げた俺の好きだったチーズケーキといつ使えばいいのか分からないネクタイ。
最後の彼女の手作りケーキは苦かったけれどすごく美味しかった。
この感情は何なのだろうか俺には分からない。
彼女は自分で望んだのだ。
なぜ。なぜ。
彼女を思い出す度に胸が苦しくなるのだろう。
なぜ。
涙が流れるのだろう。
歴史に名を残す人が印刷された紙が普通の人だったら一生手に出来ないだろう枚数。
きっと欲しいものは一通り手に入るだろうな。
けれど、俺の欲しいものはもうこの世にはもうどこにも無いのだ。
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