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「選びなさい」
冷たい目をした女が僕に手をさしのべ、不敵に笑った。
「わたくしの手を取り生きるか。あの女のようにわたくしに殺されるか」
辺りは火が燃え盛っていた。
遠目には燃え上がり崩れていくあの人の屋敷。
(僕はなにもできなかった。かつて朱雀が雪の中で震えていた僕をすくいだしてくれたように、いつか僕も朱雀を救いたかったのに)
孤独な人。とても淋しい人だった。
(朱雀が僕に手を伸ばして、僕の名前を呼びながら息絶えていくのを、僕はただ呆然と見ていることしかできなかった)
(朱雀は僕がいないといつも悲しそうだった。でも朱雀は弱さと共に、僕の幸せを望む強い意思があった)
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