第1章

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 モニターに表示された当選番号と、宝くじに記されている幾つもの番号を、何度も照らし合わせていく。そうして最後の一枚を確認した時、私は自分の目を疑った。 「嘘でしょ!? 信じられない……こんなこと、あるわけない……」  そのくじは、まごうことなく当たっていたのだ。それも一等前後賞の、一億円が、である。しかし私は、その事実を目の当たりにしても、飛び上がるほど驚きこそはしたものの、自分にようやく訪れた幸運を、どうしても信じることが出来ずにいた。  もしかしたら、このサイトの表示が、間違っているのかもしれない。今までの自分の不幸具合をかえりみれば、それもありえる話だと思った。だとしたら、とんだぬか喜びになる。  とにもかくにも、本当にこの一枚の宝くじが、一億円に引き換わるということをこの目で確認しなければ、とてもじゃないが信じることが出来ない。明日このくじを持って、最寄りの銀行に確認しに行こう。  幸いにも、この宝くじが引き換えられる銀行は、私の家から、わりと近所にあった。明日はいつも通りに仕事があるが、当日休みを取ることにしよう。少なくともこの幸運を実際に確かめないことには、どうにも仕事に集中出来そうにない。  そうなれば、会社にとっても迷惑だろう。それに今までずっと真面目に勤務しているし、一日くらいなら休んでも、きっと問題ないはずだ。私は自分にそう言い聞かせ、その日はシャワーも浴びずに、大事な当籤くじを抱いて眠りについた。  しかし激しく高鳴り続ける胸の鼓動がなかなかおさまらず、おちおち眠ることさえ出来なかった。ベッドの上で目を閉じていても、頭の中には、一億円ってどのくらいの重さなんだろうとか、私が持っているバッグの中に、全額入るのかなだとか、そんな疑問が、次々と巡ってくる。  眠ることを諦めて、再びパソコンに向かった私は、頭に浮かんだそれらの疑問を解消するために、色々と調べものをした。  一億円の大きさは、きっちりと並べると、横が三十八センチで、 縦が三十二センチで、高さは約十センチになるらしい。そして一億円の重さは、約十キロだという。どうやらいつもスーパーで買ってくる、お米の袋と同じぐらいの重さらしい。  これなら私の力でも、どうにか運べそうだと思った。それにこの大きさなら、私が持っている大きめのショルダーバッグにも、工夫して詰めれば入りそうだ。
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