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今思えば、死ぬタイミングを散々潰された。
高校の夏休み前のあの時。誕生日の時だってそうか。あとは修学旅行も。
ここでは上げきれないし書ききれないかずのタイミングを潰された。
なにより一緒にいるだけで
─────潰されていた。
死にたがりの僕を潰していた。
だからこそ。20歳を間近に控える今でも思える。
僕は一色真冬が、嫌いだ。
恋人に間違われることもあった、その度に嫌だった。
友達だとか、否定もするのが怠いほどに取り巻く環境はうざかった。
纏わりつく熱気のようで苦しかった。
でも、ようやく。お別れだ。さようならなんて言うべきではなく、おさらばだ。
真冬は入院、というか病状が悪化してる、臓器がダメになってるらしい、たぶん旅立つんだと思う。
感傷に浸ることじゃない。ただの奇跡切れだ。
怒りはすれど、悲しむことではない。
なんで死にたがりの僕よりも先に死ぬんだと言ってやりたいもんだ。
だからこの手紙を書いて渡してやる。文句を添えて。
『お前なんて大嫌いだ』という言葉を添えて。
──────。
溜息しかでないなぁ。最後まで手紙を読んで、ここまで溜息しかでないこともなかなかないよ。
なによりも冒頭、わざと読まなかったけどさ。
──────〝ハイパーミラクルとっても可愛い真冬ちゃんへ〟って自分で書くあたり馬鹿だろ本当に。
ただ、人の気持ちを察するサトリみたいな辺りは流石だな、あってるよ真冬。間逆の僕らなのに本当に当たってる。
でも、最後自分の感情入ってんなあ。
───僕はお前が好きだよ。
まぁ、纏わりつく熱気のようではあったけどね。
だけれど、感謝もしてるし、お前には生きていてほしいよ。
僕の分の奇跡も上げたいくらい、お前にはいつまでも笑っててほしいさ。
僕らは間逆だ。
ならさ、最後の言葉、お前は……。
いいや、やめておこう。考えたくない今は。
今は成功を祈って、運が悪いことを願って、奇跡を信じて。
しっかりと前を見据えて歩いていこう。
急速に迫る眩しいライトとけたたましい騒音に反して、僕は長い間思うのだった。
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