第1章

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○月△日、サフィオの話しに興味を持った二人はサフィオとともに話しの現場へ移動した。 学園旧校舎廊下の一番奥にある扉の前で、サフィオが立ち止まる。 続く二人も止まる。 横手にある錆びついた扉は少しだけ開いていた。 「ここが、先程言っていた『ビニール袋男』の現場か?」 「つーか、旧校舎なんだな。」 扉を開けると、カビ臭さが鼻をつく。 教室には当時のままで残されたのか古い木製の机と椅子が並んでいた。 窓ガラスは半分割れていた。 差し込む夕陽が教室の色合いに赤みを足していた。 いかにも潰れた校舎、廃墟だ。 「で、サフィオ。何が怖いんだ?」 廊下と教室の境界線に立った葉の声が投げられる。 「たかが潰れた校舎に来ただけで怖がるような俺達じゃねーぞ。」 サフィオが口を開く。 「僕は1回だけここに来たことがあります。入って右の壁を見てください。」 サフィオが人差し指で指し示す。 葉が室内に足を踏み入れる。 「どれどれ……」 すぐに右を向く。 顔が凍りついた。 「な、んだこの絵……………」 葉の声はしゃがれていた。 続いた悠斗も絶句した。 夕陽色に染まった壁の一面に描かれていたのは、等身大の人間の絵だった。 白と黒の縞模様の服を着た男が、首の無い鳥を抱えている絵だった。 絵は、白と黒、二色のクレヨンで幼児が描いたような下手くそな筆致で描かれていた。 絵の男の足元には人や猿や蜥蜴の頭が並んでいる。 しかし、それらの胴体は猫や魚や豚という具合だった。 シュール気取りなのだろうが、稚拙な筆致が異様さを強調していた。 何より異様だったのは、絵の中心である鳥を抱える男の姿だった。 青白い首に続く男の頭部は、ビニール袋のようなものを被っていた。 殴り描きされたような絵は、どこか異国の宗教画のような迫力を放っていた。 葉、悠斗を案内してきたサフィオですら黙り込んでいた。 三人の六つの瞳は、絵を注意して離れない。 目を逸らすことができなかった。 サフィオの唇が震える。 「・・・何か怖いものを感じませんか?」 「これは来るな。」 葉の顔が引きつる。 「この絵には、怪談話がついているそうです。」 サフィオが額に浮かんだ脂汗をハンカチでぬぐう。 「その絵に向かって『遊ぼう』、『おいで』っ呼びかけてみてください。そうすればその『ビニール袋男』がやってくるるらしいです。」 「へ、へぇ。よくある七不思議みたいなやつだよね」
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