第1章

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と悠斗が強がる。 「じゃあ、実際にやってみればいい。」 「え″っ」 サフィオに続き葉も促す。 悠斗も後に引けなくなった。 「………やるよ。」 と言いつつ、絵の前に立つ。 「おいで」 呼びかけた悠斗の顔がびびっていた顔から不機嫌な顔になった。 待っていても、別に何かが起こるわけでもない。 教師には、傾いていく夕陽が射し込んでいただけ。 「これでいいんだろ?じゃあ帰ろうぜ。」 ホッとした悠斗が教室から出て玄関へ向かおうとすると、誰もついてこない。 教室の中央で、サフィオと葉が立ち尽くしていた。 二人は顔を合わせていた。 そろって曇った顔をしていた。 口を開きかけて、閉じた。 「何してんだ?帰るよ?」 悠斗の呼びかけにサフィオが頷く。 サフィオが動き、葉も教室から出た。 二人は、悠斗を置き去りにするような早足だった。 二人が一言二言会話をしている間に悠斗が来ると、双方が口を閉ざす。 玄関を抜け、入った時より傾いて赤みを増した夕陽が三人を迎える。 大理石の階段を下り、旧校舎の敷地から出て学生寮へと向かう。 新校舎まで来ると学生達の声が聞こえてくる。 夕日に染まった世界は、急速に夜の群青色へと変わっていった。 学生寮の外に広がる学園の敷地内は、暗かった。 談話室のソファーに座る悠斗は 「いやー、なかなか怖かったな。ま、良かったわ。」 などと一人で感想を漏らしていたが、やがて室内の雰囲気に気づく。 サフィオと葉はノってこない。 談話室にある大時計の時を刻む音だけが妙にはっきり響いていた。 「おいおい何だよ?ノリが悪くない?」 悠斗の不愉快そうな声にも反応かない。 「何だよー?何黙ってんのさ?」 悠斗の声に、サフィオが反応した。 「悠斗、君に言うべきか迷っていたのですよ。幻聴かと思い葉にも聞いたのですが、どうも聞こえたような気がすると言っています。だから…………」 サフィオの言葉に、葉が口を開いた。 「その、な。聞こえちまったんだよ。悠斗が『おいで』って呼びかけたあと………」 粘りつく舌を動かして、葉が続ける。 「壁の中からな、『そっちに行くよ』って声が………」 葉の真剣な顔。 一拍おいて、悠斗が爆笑した。 「アハハハハハっハハハハっ!」 笑い声か談話室に響く。 ソファーで体を折って悠斗が笑っている。
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