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学生寮の部屋に、部屋主のサフィオと客の葉が座っていた。
低いテーブルを挟んで、ソファーに座っている。
優等生らしく、片づいた部屋だった。
二人とも黙っている。
テレビの学園バラエティー番組を見ているふりをしていた。
バラエティーがニュースに切り替わる。
サフィオの手は、自らの魔法で作る宝石を触っていた。
ニュースの声を背景に、葉が息を吐く。
ようやく口を開いた。
「あの声はマジで嫌なモノを感じた。悠斗は大丈夫か心配だな。」
「僕も不吉なモノを感じました。そう、あれはまるで狂気。」
「狂気………」
葉のセリフを無機質な電子音が遮る。
サフィオは、テーブルの横にある椅子にかけていた上着のポケットを探る。
「彼女か?」
「僕に彼女がいると思います?」
言いきったサフィオが、スマートフォンの画面を眺める。
液晶画面に映るのは、式島 悠斗の番号だった。
スマートフォンに耳を当てる。
「はい、どうしました悠斗?」
『助けてくれっ!』
切迫詰まった叫び声が飛び込んできた。
音量の設定を間違えたかと思ってスマートフォンから耳を離すが、設定は通常。
悠斗の声が大きいのだ。
サフィオが耳を戻すと、悠斗は叫び続けた。
『………てくれ!『ビニール袋男』が現れやがった!』
「おい、どうしたんだ?」
漏れ聞こえる声、そしてサフィオのしかめた表情から察したのであろう、葉は真剣な顔をした。
右耳からの怒鳴り声に耳を傾けながら、サフィオは小声で説明する。
「悠斗からです。彼は、『ビニール袋男』が来た言ってます。……どうしますか?」
「行くに決まってるだろ。」
葉の瞳がギラリと光り、サフィオは電話に戻る。
「今からそちらに行きます。」
『わかった!早く………』ブチッ!
悠斗の会話が不自然に切れた。
「電話が、切れました。」
「おいおい、やべぇんじゃねぇのか!早く行くぞ!」
「そうですね。急いだ方が良さそうです。でも、行く前に先生に連絡を入れときます。」
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