第1章

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悠斗Side 二人と別れた悠斗はデビィと自室で夕食デビィが作ったスパゲッティを食べていた。 黙々と食べ、途中でお茶を飲んで完食した。 食べ終わって部屋のソファーに座った悠斗は皿を運んでキッチンで洗い出した。 食事を終え窓際に腰掛けているデビィは、悠斗の手伝いをせず、ボーッと外を眺めていた。 窓から、温い夜風が吹き込む。 静かすぎる時間、ただ、夜が明けるのを待つだけだった。 「そう言えば悠斗、帰ってくるとき何であんなに笑ってたの?」 窓辺に座っていたデビィが首を傾げながら聞くが、悠斗は答えなかった。 「もう、なに黙りしてんのよ。」 ぷぅっと頬を膨らませるデビィ、それを見た悠斗の口許が微かに緩む。 「わりぃわりぃ、ちょっと考え事してたんだ。」 皿洗いを途中で辞め、手を拭きデビィをなだめに行く悠斗。 「あ、何かいる?」 窓辺のデビィが呟く。 「おーい、誰だ?こっち来いよ。」 悠斗が手を拭いていたタオルがカーペットに落ちた。 「あれ?頭が袋?」 デビィの言葉で、悠斗の脳裏で、旧校舎で見た『ビニール袋男』の絵が浮かび上がった。 急いで窓に駆け寄る。 デビィを押し退けるように、窓の外、学園の敷地を見下ろす。 学生寮の入口、喘息の発作のように明滅する門柱の電灯があった。 光のすぐ傍に影が落ちていた。 影は男の裸の足元から伸びていた。 色白い肌の裸の足。 上に続くのは、ブカブカの白と黒の縞々ズボン。 さらにズボンど同色の縞々の服。 垂直に垂れ下がった左手には、何かの生物を掴んでいる。 左に傾げられた頭部は、白いビニール袋に覆われていた。 ビニール袋に空けられた二つの穴には紅い瞳がギラギラと光っていた。 子供が見れば、あの旧校舎にあった絵を描くだろうという姿だった。 学生寮の敷地へと異形の男は一歩踏み出した。 土を踏みしめる裸足の音が、なぜか上の階まで届いた。 足は土から、学生寮の壁の前まで進む。 硬直した悠斗とデビィの眼下にまで男はやってきた。 男は外壁右手をついた。 ビニール袋が二人を見上げる。 適当に切り抜いたような穴からのぞく紅い瞳が二人を捉えていた。 ビニール袋から浮き上がる口が笑ったようにも見えた。 悠斗とデビィは窓辺で硬直したまま動けない。 「……………」 ブツブツと呟き右手が振り上げられ、壁の上方に貼りつく。
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