一億円じゃたりない

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次の日の朝、会社からの電話でオレは起きた、 と言うより、慌てふためいた上司の怒号により寝ぼけが一瞬で覚めたのだが、オレは何事かと首を竦めて聞き入った、彼の言うには、オレが昨日借りた現場のカギを返さずに帰ってしまった、との事だった。 確かに、カギをすっかり返し忘れてしまっていた、失敗した、一億円に浮かれて、完全に失念していた、 さらに、悪い事に、多分そのカギごと、服を捨ててしまっていた事を思い出した。 オレは昨日買った服屋、ユニシロを再び訪れ、慌てて事情を話し、昨日捨てた服が無いか確認してもらった。 奇跡的に服はまだ有った、が、カギは見つから無かった、 とすると、リュックだ、リュックと一緒に捨てた作業着の中にカギが入っていたのだ、これはマズい、何しろ捨てた場所は公園のゴミ箱だったので、絶望的だ、誰かに持っていかれた可能性が高い、 一応、その公園にも確めに行ってみたが、 やはりゴミ箱の中に、もうリュックは無かった。 オレは電車に乗り、昨日の現場に向かった、素直に謝るしかない、弁償は怖くないが、怒られるだろうなと、気が重かった。 現場の管理事務所、カギを借りた場所だが、そこに着くと何故か騒然としていた。 オレは開口一番、謝った。 「す、すいません」 管理さんの一人が言った。 「あっ、お前か、カ、カギはどうした」 うわ、かなり怒っている、オレはもう覚悟を決めて、頭を深々と下げた。 「ご、ごめんなさい、無くしました」 そおっと頭を上げて、辺りを見ると、管理さん達は、皆無言で顔を強張らせていた。 オレは何かちょっとおかしいぞと思った、すると一人の管理さんが、一枚のファックス用紙を差し出した。
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