一億円じゃたりない

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とまぁ説明している内に一曲歌い終わってしまったのですが、なんかウケが良い、新アニメの主題歌だったからか、たんにオレがご機嫌だっただけか、はたまたオレの一億円が心の余裕を生んだのか、 オレの後ろに座って居る、二人組の女性客が熱心に拍手をくれた。 「あ、ありがとうございます」 二〇代前半、外見からはアニオタとは言えない普通の女の子達、一人はロングヘアーの一見お嬢様風、もう一人はボーイッシュメガネ、二人とも結構可愛い、オレは絶好調となり、お店のオリジナルカクテルと一押しメニューのハニーアップルトーストを頼んだ、思うのだが、アニオタには甘党が多い気がする、 すると、その後ろの女の子の一人、ロン毛お嬢様が歌う番となった。 少し懐メロのミディアムテンポ、アニメも当時大人気で今でも根強いファンが多い、それにしても、この唄は、良い声している、声量たっぷりで、高い音域も苦しげなく綺麗に通る、クリアカラーの様な鮮やかで輪郭のしっかりした歌声に、オレは聞き惚れた。 「凄い、上手ですね」 「ありがとうございます、お恥ずかしいです」 彼女は照れたと言うか、満足げに微笑んだ。 「あの、もしかして歌手の人か声優さんですか」 オレはお世辞じゃ無く自然に訊ねていた。 するとその彼女の連れのメガネの子が応えた。 「分かる、声優志望なのよ」 ひゃー凄い!さすが声優、カッコイイ! 「やっぱりそうか、メチャ上手だもん」 「やめて下さい、照れちゃいます」 片手を振って照れ笑いを誤魔化した彼女にオレは完全にヤラレた。 興奮したオレは、彼女にリクエストをお願いした、この店は歌うのにも代金が掛かる、もっとも事前に買ったチケットを消費するシステムだが、今日のオレはいつぞやとは全く違う、お金だけはいっぱい有るのだ! 通常一曲歌うのに二枚チケット使うのだが、オレは計十枚消費して彼女にバックダンサーを二人付けた、まぁそう言ってもウエイトレスさんの事でデュエットと同じノリ、ダンスは結構上手だ、つまりカラオケステージを華やかに飾る豪華演出なのだ、それごと彼女にプレゼントしたのだ。
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