第1章

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 雑木林の奥に隠れるようにして佇んでいた一軒家を見つけたのは偶然だった。  なかなか立派な洋館風の家は一目で金がかかっていると分かる造りをしていた。  周囲に人の目がない事は確認済みで、中に人のいる気配もなかった。例え誰か居たとしてもどうにでもなる自信もあったのだが。    初めからそのつもりで持参していた手斧で手頃な窓を叩き壊し、家の中に侵入した。  残念ながら自分の好みではなかったが、外見に違わず内装も随分と手が込んでいた。  片っ端から戸棚や引き出しを開けて回り家の中を漁るが目欲しい物がなかなか見つからない。  地下室やキッチンまで隈無く漁ったが、駄目だった。  もう帰ろうかとも思ったが、ここまで来て手ぶらというのも何だか癪だった。  この際戦利品はカーペット一枚だって構わない。  そんな投げやりな気分で何気なく覗き込んだベッドの下に見つけたのはこの家には不釣り合いなくらいの素っ気ないデザインの旅行鞄だった。  その鞄が欲しかった訳でもないが中を開けてみようと思ったのは、何か、直感的なものがあったのだと思う。  そっと開けて覗いたその中身は、紙幣の束、束、束。総額はざっと見積もって1億円程度だろうか。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加