通帳を見てみなさい

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元は親父の借金じゃない。親父のもっと上の世代が背負った借金で……そして親父も相続してしまい、親父が亡くなったからそれが今度は俺に降りてきたらしい。 お気の毒に、なんて優男は言っているが、心にも思っていない。 だって、取り立てなら親父が亡くなってすぐに来れる。そして、俺は相続放棄の手続きが出来る。 きっと、もう取り返しのつかないこの時期を狙って、この男達はやって来たのだ。 「さて、どうしましょうか。 借りた分はもちろんですが、利子もきちんとお支払い頂かなくては……あ、俗に言うトイチではありませんのでご心配なく。 利子の額は固定なので、とても良心的ですよ」 にっこりと微笑む優男。 だが、それでも提示された金額は、払い続けるには厳しい額。 俺が難色を示していると、 「そういえば、奥様、とても綺麗な方ですね」 突然の思いもよらない誉め言葉に一瞬ぽかんとしてしまい、それから遅れて、どうも……、と一応礼を口にする。 ……だが。 「そこで提案なのですが、奥様に打ち明けるというのはどうでしょう。 そして、貴方はいつも通りのお仕事を。奥様には、私共の紹介する、体を提供する職場で働いて頂く、という事で……」 「ま、待ってくれ!」 「──待ちませんよ」 瞬間、男の声が、目付きが、鋭くなった。 だがそれも少しの間だけで、またすぐに表情が、先程までの優男に戻る。 それでも、俺が情けなく怖じけるには、充分なものだった。 「り、利子の分は、仕事も増やして……返していきますっ。もちろん、借りている分も……! だから、家族にだけは……」
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