2人が本棚に入れています
本棚に追加
元は親父の借金じゃない。親父のもっと上の世代が背負った借金で……そして親父も相続してしまい、親父が亡くなったからそれが今度は俺に降りてきたらしい。
お気の毒に、なんて優男は言っているが、心にも思っていない。
だって、取り立てなら親父が亡くなってすぐに来れる。そして、俺は相続放棄の手続きが出来る。
きっと、もう取り返しのつかないこの時期を狙って、この男達はやって来たのだ。
「さて、どうしましょうか。
借りた分はもちろんですが、利子もきちんとお支払い頂かなくては……あ、俗に言うトイチではありませんのでご心配なく。
利子の額は固定なので、とても良心的ですよ」
にっこりと微笑む優男。
だが、それでも提示された金額は、払い続けるには厳しい額。
俺が難色を示していると、
「そういえば、奥様、とても綺麗な方ですね」
突然の思いもよらない誉め言葉に一瞬ぽかんとしてしまい、それから遅れて、どうも……、と一応礼を口にする。
……だが。
「そこで提案なのですが、奥様に打ち明けるというのはどうでしょう。
そして、貴方はいつも通りのお仕事を。奥様には、私共の紹介する、体を提供する職場で働いて頂く、という事で……」
「ま、待ってくれ!」
「──待ちませんよ」
瞬間、男の声が、目付きが、鋭くなった。
だがそれも少しの間だけで、またすぐに表情が、先程までの優男に戻る。
それでも、俺が情けなく怖じけるには、充分なものだった。
「り、利子の分は、仕事も増やして……返していきますっ。もちろん、借りている分も……!
だから、家族にだけは……」
最初のコメントを投稿しよう!