泣き顔は微笑みに

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「おかえりなさい。遅かったのね」 智子の声を聞くと私は少しホッとした。 「あぁ、もう電車に乗るのも嫌だったからタクシー捕まえたよ」 私は着ていたジャケットを智子に渡しながら、言葉を返す。 「そう」 智子は一言そう呟くと私のジャケットをハンガーにかけてくれた。 「で、柏原さんなんて?」   智子は私の感情とは正反対に少しあっけらかんと話す。 「話にならないよ」 「どうして?  あなたのこと高く評価してくれて、今回相談があるから呼び出されたんでしょ?」   智子の言葉に少し憤り感じたが、私と柏原さんの会話を知らないから当然かと少し冷静になって、言葉を選ぶ。 「柏原さんは私の文才を高く評価してくれてるわけじゃなかったんだ」 「どういうこと? 全面的にサポートしてくれて商業出版でって話じゃなかった?」   私は先ほど起こったことを思い出してしまい、智子の前で少し涙ぐんだ。 「ちょっと!? どうしたのよ? とにかくちょっと座って」   私は家内である智子の前ではこんな風に感情をあらわにすることが度々ある。それは智子と知り合って、付き合い初めてからだ。
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