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確かにバーのマスターと先ほどまで話をしていた。
今度、遠方の実家に住む私の妹が結婚する。
田舎ならでは盛大な結婚式に見合った祝儀が必要だった。
見栄を張りたがる両親は、息子は都会の大企業でバリバリ働いているエリートだと近所に吹聴して回っていた。
実際は誰もが知る大企業の系列会社というだけで、ようは下請けだ。
二人きりの兄妹なのでもちろん心から祝いたい気持ちはあるのだが、いかんせん金が無い。
東京からの直行便も無いような島なので、いざ帰省するにしても交通費も馬鹿にならないのだ。
そして今は、先月無理して買った車のローンが重くのしかかっていた。
「確かに、ありがたい申し出です。
けれど最初に1億預けるよりも100人に100万円づつ渡した方が良いのでは?
私やその次の人が全額貰って知らんぷり、なんてこともあるでしょう。証拠も何も無いんだから」
すると、謎の紳士は微笑んでこう言った。
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