鳥のはばたき

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 あれから十数年。  頭上を、かつてのように何十羽…いや、何百羽という鳥がはばたき、行き過ぎた。  猛禽類に追われている。夕暮れが迫ったので巣に帰る。雨が降りそうだからやはり巣に帰る。  そんな場面を山程見つめ、見送った。季節には、色んな渡り鳥が現れ、あるいは飛び立つ様子も見送った。  その空を、黒雲のようにうねる小鳥たちが飛んで行く。いや、逃げて行く。  あの日、今は亡き祖母が、私の問いに答える暇もなく私を連れて逃げた日に感じた、どうしようもなく得体の知れない空気が、鳥達がやって来た空の向こうから近づいて来る。  本当は、今すぐ帰るべきなんだろう。小鳥達のように、祖母のように、大慌てでこの場を立ち去るべきなんだろう。  でも、募りすぎた好奇心は恐怖心を凌駕して、違う意味で私の足をここに縫い留めている。  きっと、見てはいけないものが来る。  きっと、知ってはいけないものが来る。  それを予感しているのに、判っているのに、私はもうこの場から動けない。  遥か遠くで、逃げ切った鳥達のはばたきが聞こえた…。 鳥のはばたき…完
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