【館への招待状】

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やっぱり全て現実だったんだ。 私はもう逃げられないみたい。 だったら行くしかない……。覚悟を決めるしかない。 私は退職届を書いて自室の机にそっと置いた。 【工場長へ。馬鹿な話だと思うかもしれませんが私は幽霊を見てしまいました。このまま生活していてもいずれは幽霊に殺されて死ぬと思います。それは嫌なので自分の生きられる可能性を探すために行動したいと思います。 もう帰ってこれないかもしれません。今まで働かせてくださりありがとうございます。迷惑をかけると思うので仕事は今日付けでやめることにしました。勝手ですみません。九条恵】 ……。 何日も連絡がつかなかったら私の家まで来てくれるよね……。 鍵は開けておこう。 あとは家族だけど……。 いや、いいか。 両親はどうせ私が死んでもなんとも思わないだろう。 生命保険が貰えてラッキーとすら考える様な冷たい人達だから。 ……。 どうして私はあんな人達の娘に生まれたんだろうね……。 もっと愛されて育っていたら私もこんなひねくれる事もなかったろうに。 人から愛されたい願望はあるのに。 裏切られるのが怖くて自ら一線を引いてしまう。 その方が楽で傷つかずにも済む。 だから私は信頼できる人を作ることができなかった……。 ……このまま死んでいくなんて寂しすぎるよ。
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