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『はい』
「あ、あの、黒木場探偵事務所さんですよね。相談したいことがありまして」
『え、ご依頼で?』
男性の声。探偵事務所のHPを見たときの写真は女性だったのだが。名前は黒木場奈々。この男性は助手か何かだろうか。
「はい」
『ちょ、少々お待ちください』
なぜか少し狼狽えたインターホンの向こうの彼は、僕ではない誰かに、おーい、と声をかけている。
『ななちゃーん。すごいよ早速依頼人さん来てくれたよ! そんなこと言わないでよ。せっかくのお客様だし、ね?』
おそらくはこの事務所唯一の探偵、黒木場奈々に何かを説得し終えた様子の彼は、おそらくはこちらに向き直り、すみませんと言った。
『ご依頼ですよね、お伺いします。今ドア開けますので部屋までいらしてください』
「はい、ありがとうございます」
自動ドアが開き、マンション内に足を踏み入れた。ロビー内の装飾、花、絵画。それらを見れば、このマンションが安く住める場所ではないことくらい誰でもわかる。
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