第1章

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服は、いつにも増して保守系。 カチッとしたパンツ・スーツを着て、 ブラウスのボタンを一番上まで きちっとしめて、佑香は、彼を呼び出した。 業務終了5分前。 ―――後ろめたい思いがないわけではなかったーーー 場所は別フロアーの小さめの会議室 ちょっとした緊張がはしる。 汗ばむ手のひら。 ――どうしよう…―― デスクを挟まないで、 椅子を向い合せにして座る。 彼はいつもように、クールな表情をしている。 その両手は、膝の上にきちんと握られている。 「えー あのー...」 いかん! 最初からこれじゃ 「伊藤君!」 襟を正して、 毅然と呼びかける。 「はい?」 涼しい顔をして答える彼。 「今回のことだけど...」 「今回? 給湯室の情事のことですか?」 にこっとして答える。 「それとも、 クラブでの‘フライデー’ですか?」 こんどはちょっと皮肉そうな顔で、答える。 顔から火のでる佑香。 ーーーやっぱりーーー からかわれていたんだ...
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